ロストバゲージはなぜ発生するか。元空港管理職が説明。

[画像:ddcaf4b1-s.jpg]

ロストバゲージ(Lost Baggage)。

飛行機に搭乗するにあたって空港で預けた荷物が失くなることを、一般的にそう呼びます。
ネットニュースをみていたら、自分の荷物がロストバゲージになる瞬間を目にした、という記事があがっていたので、ここで、元エアポートマンだった立場から、なぜロストバゲージが起こるのか解説しましょう。
まず、空港で荷物を預けるとバーコードの付いたタグが荷物に付けられます。
このタグには、誰の荷物が、いつ、どのフライトで、どこの空港からどこの空港までどこ経由で行く、という情報が入っています。
この情報は各航空会社のチェックインシステムが発行するもので、BSM(Baggage Sorting Message)と呼ばれます。
最近の多くの空港ではチェックインカウンターで荷物を預かってからX線に通すので、この後荷物はX線などの保安検査を受けながらベルトコンベアに乗ってコンテナの待つ荷捌き場(ソーティング)に流れ着きます。
ソーティングには荷物を積むコンテナ(コンテナのない小型機の場合は飛行機まで荷物を運ぶカート)がフライトごとに並んでいて、その、フライトごとに荷物をコンテナに積む指定の場所をメイク、と呼びます。
例えばJAL111便とANA111便が同じぐらいの時間に出発するとすると、ソーティングの中には、JAL111便のメイクがあり、少し離れたところにANA111便のメイクがある、ということになります。
さて、先ほど話したチェックインシステムが発行するBSM。
そのBSMを空港の荷物管理システム(BHS = Baggage Handling System)が正しく受け取り、認識すると、荷物はチェックインカウンターから、そのフライトに割り当てられたメイクに自動的に流れ着きます。
ここでコンテナに詰められ、その後100個とかの荷物が詰まったコンテナが飛行機に積まれ、出発、となります。
到着空港では逆の流れで飛行機からコンテナが降ろされ、ソーティングに運ばれ、コンテナから出された荷物はベルトコンベアに乗せられて到着エリアのターンテーブルに流れていきます。
これが、およその荷物の流れ。
では、ロストバゲージはなぜ、どこで起こるのか。
それぞれのステップで可能性があります。
書き出してみましょう。
1. チェックインカウンターで
チェックイン担当者がうっかり他の乗客の名前で荷物を預かってしまい、全く違うタグが発行されてしまうケース。あり得ないようで、けっこうあります。
複数のフライトを同じカウンターでチェックインしていたり、似たような名前の予約が入っているとやりがち。
荷物を預けると乗客にはタグの半券が渡されます。
これには持ち主の名前が書かれているので、本当に自分の名前で荷物が預かられているか確認しましょう。
2. ベルトコンベアで
チェックインカウンターから流れた荷物は、普通、前に流れた荷物と一定の間隔をあけてベルトコンベアを流れていくようになっています。
これが、滑りやすい荷物だったりすると途中で滑って隣の荷物に接触してしまうことがあります。
すると、BHSがそれら2個の荷物を1個だと見なし、違うフライトの荷物であっても最初にタグを読み取ったほうのフライトのメイクに流してしまいます。
つまり、本来行くべきフライトのメイクにはその荷物は届きません。
なので、変わったかたち、変わった素材の荷物はおすすめしません。
3. ソーティングで
BHSがBSMを正しく読めなかった荷物は、「よくわかんない荷物コーナー」に流れ着きます。
これを航空会社スタッフがきちんと見つけて本来のフライトの位置に戻せば問題ありませんが、タグが取れてしまって名前の記載もなくどのフライトの荷物かわからないと、そのままになってしまいます。空港置き去り。
荷物にはローマ字で名前を書くようにしましょう。
よくわかんない荷物コーナに流れ着いても、持ち主の名前がわかれば空港の担当者が各航空会社のチェックインカウンターかバックオフィスに電話して「そちらのフライトの乗客ではありませんか?」と確認してくれます。
4. メイクで
ごくごくまれに、割り当てられているメイクを間違えて、あるフライトの荷物をごっそり他のフライトのコンテナに積んでしまうとんでもないミスが発生します。
さすがにANAのメイクにJALのスタッフが現れて荷物積み始めたら「待て待てJALさん」とANAスタッフが止めるでしょうが、同じ航空会社の別フライトで、チームが丸ごとメイクを勘違いしていると、あり得ない、とは言い切れません。
ごくごくまれです。発生したら口あんぐりです。
5. 飛行機で
コンテナを飛行機まで運んだけれど、乗らないケース。実はあります。
たいていそれは、わかっていて意図的にです。
例えば、すでに飛行機の搭載可能重量を超えていて載せられない場合。
飛行機は、飛行機自体の自重、乗る乗客の重さ、荷物の重さ、貨物の重さ、燃料の重さを計算して、安全に飛行できる重量とバランスが規定されています。
けっこう繊細な計算です。
例えば、小型機で前方のビジネスクラスはガラガラ、後ろのエコノミークラスはど満席、となると、荷物は極力前のほうに積まないとバランスが悪く飛べなくなったりすることもあります。
その場合、後ろの貨物スペースがまだ空いていても、これ以上後ろに重心が偏ると安全に飛べないから、荷物は置いて飛ばそう、という判断がされたりします。
重量、重心のために何かを置いていかないければいけない時、まず降ろすのは貨物、次に乗客の荷物、最後に乗客自身、というのが一般的な優先順位です。
乗客が乗って荷物が降ろされたら、はい、ロストバゲージです。
6. 到着空港のソーティングで
荷物が飛行から降ろされた時点で、あやしい荷物は税関職員が差し押さえたりします。
当然乗客の手元に荷物は戻りませんが、乗客自体もすぐに取り押えられるので、あまりロストバゲージ的な騒ぎにはなりません。
7. 到着空港のターンテーブルで
最後の最後まで気は抜けません。
乗客と同じく長旅の末やっと届いた荷物。
無事にターンテーブルに出てきて持ち主が引き取るのを待つばかり、、、
と思ったら、他の乗客が自分の荷物と勘違いして持って行ってしまうことがあります。
あとは、少ないですが意図的な窃盗も。
他の人のロストバゲージを防ぐためにも、引き取る時は自分の荷物かしっかり確認してください。
貼ってあるタグを見れば、あなたの名前が印字されているはずです。
以上のように、ロストバゲージはいろいろな要因で発生します。
正直、エアポートマンの立場からするとあまり珍しいトラブルではありません。
ちょこちょこ発生しています。
あとは、ここだけの話、ロストバゲージの多い航空会社、というのはだいたい決まってます。
ロストバゲージの多い空港、というのもあります。
日本国内の空港、日本の航空会社は該当しませんが。
世界中の航空会社、空港がなんとかロストバゲージを防ごうと努力していますが、それでもどうしても防ぎきれないのが現状なのです。
荷物を預ける時は、自衛策として名前を書く、変わった形状の入れ物などに入れて預けることを避ける、ロストバゲージを想定して貴重品は入れない、数日間その荷物がなくても過ごせるよう数日ぶんの衣類は手持ちにする、などの対策を取ると、リスクマネージメントになります。
あとは、クレーマーにならないよう、冷静に必要な補償を航空会社と交渉しましょう。

2 Replies to “ロストバゲージはなぜ発生するか。元空港管理職が説明。”

  1. もっともセントレアで個性豊かなPAXが搭乗しているあの航空会社の話が聞きたいなー
    旅行会社が潰れてeチケット発券できてなかったとか

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA